「ゴジラVSキングギドラ」★1/5
現在と未来をいったりきたりするストーリーの枠組みはともかく、エピソードの組み立てが杜撰すぎて、物語世界に入っていけなかった。SF考証だけにとらわれて、物語をどうこう言うのはナンセンスにしても、それ以前の問題が多すぎる。
例えばラブストーリーがタイムトラベル(スリップ)を扱った場合、「タイムパラドックスが……」みたいな指弾をされることはよくある。
でも、フィクションとしての物語は「ブルーバックス」ではないのだから、SF考証はあくまでストーリーのための一つの道具。ファンタジーの言葉尻をとらえて、鬼の首をとったようにどうこう言うのは何かズレている。
でも、この作品、タイムパラドックスとか言う前に、恐ろしく作りがいい加減で、突っつけるような重箱のスミなんてどこにもないようなスカスカの話だった。
広告写真やファッション誌のグラビアを見ていると、まただんだんと太くなってきた女性の「眉」
というわけで23世紀まで太眉が続く……わけもなく、23世紀人役の中川安奈も今はこんな感じ(写真)
それにしても、CinemaScapeの「ゴジラVSキングギドラ」の各コメントで散々な目にあっているのがチャック・ウィルソン。ロボットにされたり、チャック・ノリスっていわれちゃったり(これはネタかも)……でも、一応は「芸歴」もあるのに、M-11号の稲川素子事務所芝居とドングリの背比べでは、せいぜいそんなところか。
※以下はネタバレ
“過激派”チャック・ウィルソンたちは、過去に干渉しようとしたのだから、横田順彌風に言えば「時間犯罪者」
でも、中川安奈がキングギドラの死骸を未来に送って、それもあんな大改造をして、新宿で大暴れしちゃうのは「時間犯罪」にならないのか?
これではタイムパラドックス以前に「お話にならない」
ところが、そんなツッコミを思いついたのは見終わってしばらくたってからだった。
なぜならこの作品、そもそも「ゴジラ」としておよそいい加減なものだったからだ。
西新宿の豪華セットは、たしかに84年の「ゴジラ」よりも相当よくできていた。
バトルそのものの迫力も、室内ラジコンヘリコプターのようなスーパーXとの戦闘よりはまだマシだったろう。
でも、「怪獣映画」が二大怪獣激突シーンで観客を退屈させてどうする?
まず、西新宿は市民が避難済みでカラッポ。
逃げまどう群衆もいなければ、怪我人も出ない。死ぬのは功名心だけのテレビリポーターと、個人的清算か覚悟の上かは知らないけれど、老いた財界人だけ。
これじゃあ怪獣映画どころか、デザスター映画にもなれない。
そもそもこの作品、「ゴジラ」映画のくせに、ゴジラとキングギドラのバトルがちっとも面白くない。
テレビシリーズのウルトラマンや戦隊モノのアクションほどの緊張感もないのだから、これで盛り上がれというのは無理というもの。
最強ヒールのキングギドラを持ち出しておいて、こんなダラダラした戦いをさせても意味がない。
特撮の川北紘一には、初代ゴジラでゴジラそのものの怖さと緊張感を、そして「地球防衛軍」や「宇宙大戦争」で、光線バトルだけでもテンションをドッカンドッカン高められることをもう一度勉強させ直した方がいい……と、それこそ自分が時間犯罪者になりたくなってしまった。
この人が平成モスラシリーズの二作目まで東宝特撮の屋台骨だったのだから、その10年間はロスト・ジェネレーションのようなものだったのだろう。
結局この人は、最初から最後までずっと「ガンヘッド」のようなことしかできなかったのだ。今さら、そう思った。
それから、「ターミネーター2」については、「破廉恥」の一言しかない。
(2004/12/08・CinemaScape「ゴジラVSキングギドラ」に投稿)