リーダー大活躍

砂の器」を見た。
加藤剛田村正和なピアニストが「中居くん」という時点でもうダメじゃん……というのが見る前からも見てからも変わらない感想。
中居正広の演技は相変わらず『白い影』で『模倣犯』のままだし、妙に濃いメイクも彼が芝居をする時のいつものトーン。
木村拓哉がどんなドラマでも「キムタク」をやっているのは彼の商品価値だけれど、中居くんはそれしかできない芝居をくり返しているだけで、それがことごとく彼のキャラクター性と離れている。
ファンが多いから視聴率もとれる……なんてのはマーケティングの理屈で、彼自身の商品性や作品の善し悪しとはまるで関係ない。

でも、ドラマ自体は気を使って作ってるなあ、といろいろ感心もした。
特に、ビデオ撮影なのに「光と影」のディテールにこだわったカメラワークはなかなか見せてくれる。
原作、旧作ドラマ、映画ときて4回目の追体験。視聴者としていつまでテンションをひっぱれるかわからないけれど、もうしばらくはつきあえるかな、とは思った。
そのわりには、コンサートのシーンで手と音が全く合っていないカットがいくつもあったのは残念。演技がそれだけダメだったのかもしれないけれど、編集でカバーできる範囲はもっと広かったと思う。

それから、前宣番組や番組公式HPがしっかりしているなあ、と思ったのは、和賀に関する様々な「謎」については、それを嘘をついてまで謎のままに残していることだった。
まあよく見たらロケ地とかはポロッと書いてしまっているんだけど、そのへんは校正ミスっぽい(あと、BBSがリアルタイムで書き込まれるわけじゃないことをわざわざバラしちゃう必要はないよね)。
このストーリー、アレがどこでアレが誰なのかわかっちゃったら、半分くらいは謎がとけてしまうわけで、いくら有名な作品とはいえ、そこは気を遣ったんだろう。
74年の映画化の記憶がまだまだ残っているときの旧作テレビドラマ(77年)は、ストーリーが知られているからこそ、今西刑事(仲代達矢)を中心に長嶋茂雄引退をからめた大胆な構成をとったのだと思う。
今回は、原作のテイストを骨太に残しているのかと思ったら、大劇団(彩の国さいたま芸術劇場を根拠地にしてるんだから劇団四季以上の規模……なんだろう)、やけに存在感のあるヒロインが登場。正直今後の展開がちょっと不安。
とにかく、今までの映像化(前述2作の他に、1962年(原作連載終了直後のドラマ化。和賀役・夏目俊二)と91年(和賀役・佐藤浩市)がある)と違った作品世界を、うまく料理してくれることにちょっとは期待。ってことは、結構気にいっちゃったんだろう。
これで和賀が中居くんじゃなかったらなぁ……っていう根本的な問題が足を引っぱってるって大前提はあるにしても。

半落ち』の前宣番組なんて、主人公が隠し続けていた「残り半分」をあっさりバラしてしまったんだからずいぶん違う。謎解きが終わっちゃったミステリーなんて、誰も見たくないもんね。 

そういえば去年大台に乗った女の子が、「松雪泰子っていつのまにか私と同じ歳になってたんだよねー」と言っていたのを思い出した。たしかにちょっとキツいかなぁ。