セックス禁止、性教育も禁止?

「性病や妊娠を避けるために中学生はセックスをするな」
これだけシンプルでマッチョな論理にはそうそうお目にかかれない。
それなら刃物メーカーや売ってる店は全部業務停止にしなきゃいけなくなるだろうし、相撲部屋も入門禁止(あ、廃業禁止?)にしなきゃいけなくなる。
とはいうものの、その規制の狙いは案外別の所にあるんじゃないの? って邪推は昨日「中学生セックス禁止令?」で書いた。

くり返しになるけれど、性病や妊娠を避けるのが目的ならば、実効性のそう期待できない法規制よりも、性交可能年齢以降における性教育の方が重要だろう。
そうなると、身体生命に関わるラジカルな部分まで学校に丸投げして当然と思っている親たちの無責任さも問題なわけだけれど、それはまた別の話。教育現場に期待される役割があるのはそれ自体至極当然のことだろう。

ところが、世の中には学校で性教育をさせたくない人たちがいるようだから困ってしまう。

教職員92人処分の異常
親、教職員から批判相次ぐ
東京都議会本会議での、民主党土屋敬之都議の質問(7月2日)をきっかけに、東京・日野市の都立七生養護学校三苫由紀雄校長)にたいする都教育庁の高圧的な調査が行われ、9月には他の都立盲・ろう・養護学校も含む教員の処分が行われる異常な事態になっています。「教育内容・現場に不当な支配をしようとするものだ」と父母や教職員、教育研究者から強い批判の声があがっています。 研究者から高い評価 七生養護学校性教育は、障害や発達の程度に応じて、親の同意を得ながら教職員が一体で進めており、教育研究者からも高く評価されています。 土屋都議の質問は「最近の性教育は、口に出す、文字にするのもはばかられるほど」などというもの。質問直後の7月4日、自民党古賀俊昭田代博嗣両都議と連れだって七生養護学校を視察し、性教育用教材を提出させ、23日に教材を都議会談話室に展示しました。 一部都議の動きと呼応した都教委の動きも素早く、同9日に30人を超す指導主事を動員し、同校の教員全員に「拒否はできない」と言い渡したうえで事情聴取。12日に性教育の全教材を提出させました。 さらに、8月28日には、この問題を契機に都教育庁内に設置された都立盲・ろう・養護学校経営調査委員会が、「都立盲・ろう・養護学校の半数にあたる28校で学級編制や教員の服務で不適正な実態があった」などとする報告書を都教育委員会に提出。都教委は9月11日、校長、教頭、教職員92人を処分するという事態になっています。(以下略)─2003/09/26 しんぶん赤旗


どうして性教育をさせないのか?
という理由を、アンチ石原都知事的マチズモの立場から捉える人は、「セックスをタブーにしてしまう。セックスしないことを道徳とする前時代的な保守的思想」と見ている向きがあるようだ。

それもまた大きくずれてるんじゃないだろうか?

「抽象的な理解が苦手な知的障害児には、教材で具体的に教える必要があります」
「(昨今は)障害児が性被害に遭いやすい(情勢にある)」
「(処分は)教育現場の実態をまったく無視したもの」(同紙より・カッコ内筆者加筆)

その指摘自体は正しい。でも、性感染症や妊娠の増加を「セックス禁止令」で抑え込もうだなんて言い出せる世間知らずの官僚たちに、そこまでの想像力があるかどうかは疑問だ(ここでは前述の「邪推」は置いておく)

都議会でそこまで攻撃されたのは、
労働組合や教育研究団体、障害者団体など19団体が7月22日に緊急集会を開き300人を超す人が詰めかけた(同)」
というような展開になるような状況下でおきた出来事だからではないのか?
取り上げるメディアは「しんぶん赤旗」。集会には動員された労組がやってくる。
そういったバックグラウンドが正しいのか間違っているのか、それを判断できるのは一個人ではないと思う。

でも、世の中全体でみたときに少数派なのは事実だ。




以前都下に住んでいたときに、都道の拡幅についての公聴会に出席したことがある。
動員された労組が何人も最前列に座っていたので驚いた。その地域に直接利害関係のある労組はないからだ。
会が進行するにつれてわかった。敷地がその拡幅にひっかかる都立高校の日教組が動員をかけていたのだ。
反対派の住民が発言すると、「絶妙の」合いの手や拍手。都側の担当者が発言するときにはこれまた「絶妙の」ヤジ。
私立幼稚園の園長先生、シスターのおばあちゃんが「今の道路は歩道が狭くて子供たちが危険。歩行者スペースが広げられることに期待」なんて発言をしようものなら完全無視。
本当はヤジりたかったんじゃないか? なんて思いたくなるくらいに「荒れた」公聴会だった。

その道路は対向二車線でとにかく狭く。歩道なんて歩行者がすれ違うのにも苦労するところがほとんど。それが休日になると植物園と、蕎麦で有名な深大寺目当てでやってくる観光客の車で大渋滞になってしまう。
ところが、調布市観光協会の担当者は「調布市は『水と緑と寺と蕎麦』。自然が豊かな環境に、交通量が増える大きな道路は不要」なんてことを言い出す。もちろん労組は合いの手と拍手で大応援。
その人物は、どうも深大寺蕎麦の同業者団体の関係者でもあったようだけれど、それなら自分たちが駐車場を何カ所も何カ所も作ったり、観光客のツアーバスをどんどん呼び込むようにしていることをどう説明するんだ?

調布北高校日教組にとっては、幼稚園児が狭い歩道で危険になることよりも、自分たちの学校が敷地を削られることで定員削減になってしまうことが重要だったようだ。
曰く「地域の子供たちの受け皿が減少してしまう」
本当にそれだけ? 自分たちの雇用不安にも言及すればよかったのに。

拡幅賛成派が、環境アセスメントやその後の騒音対策などへの不安への言及や、具体的な対策を求めていたのに対し、反対派はとにかく反対を叫ぶだけ。将来的にどんな利益不利益が起こりうるのかには全く関心がないかのようだった。

それ以来だ。ピースウォークだろうとなんだろうと、赤旗が翻るところには懐疑的になったのは。

サヨクの人たちにとっての開発事業は、なんでもかんでも長良川吉野川諫早湾と同じになってしまうらしい。
公益をアピールしたいのであれば、ごくごく近所で法律を曲げてまで雑木林を伐採し、税金をスタジオジブリと読売─日テレラインに永遠に垂れ流し続けるジブリ美術館のことを取り上げるべきだったと思うけど。