「売るものがない、じゃあ困っちゃう!」

下井草の「バツグンにおいしい*1焼肉屋に行ってきた。「焼肉サラン」下井草駅前の商店街のはしっこにある。

前回BSEがらみで「牛角」にふれたときに「(下井草では)同じような値段でバツグンにおいしい店が線路はさんだ反対側にある」と書いたのがココ。例えばサービスメニューの「いちおしカルビ」「いちおしハラミ」はどちらも480円(牛角では牛角カルビ\490。熟成ハラミ\490円)。もちろん味はくらべものにならない。
近所の人はみんな知ってるから、土日は家族連れで満員になってしまい、並ぶこともあったりする。

ここで一番おすすめなのは「花ホルモン680円」。
ホルモン(小腸)を味噌ダレで食べるのだけれど、これがとにかくおいしい! モツ好きな人ならたまらないはず。
「普通のはね、冷凍ですけどこれは生なんですよ。だから限定なんですけどね」と説明してくれたのはこの店の店主。話好きな人なので、店が空いているときなら勝手に話しかけてきていろいろ教えてくれる。

ところが……今日の店長トーク。花ホルモンを出してくれた時に「内臓はいまのうちですからね」と気になる一言。
「あとね、タンも危ないです。品物がなくなっちゃうんですよ」
2年前のBSE騒動の時は「売るものはあったけどお客さんがこなくなっちゃった」そうだけれど、今回は状況がずいぶん違うらしい。
「牛肉市場はアメリカ産が三割くらい。それが入ってこないとなると、みんな大手が買い占めちゃうんですよ。値段がグングンあがってきてる」
吉野家が特盛をやめたことも、過剰反応というわけではないらしい。
「このままだと市場価格が二倍くらいになっちゃうかもしれない。三割四割あがったら私たちはもうダメですからね。値段上げるわけにいかないし、せっかく来てもらったけど売るものがない、じゃあ困っちゃう」
安くておいしい焼肉は、本当に今のうちだけかもしれない。

アメリカで流通する牛肉は、年間約3500万頭。そのうちBSEの検査がされているのは1万頭〜17万頭(各所の報道に幅がある)と、それこそ九牛の一毛。輸入がそう簡単に再開されるはずもなく、価格高騰は続きそうな気配だ。
ところが、吉野家は「全頭検査には科学的根拠がない」となんともルーズな認識で、農林水産省に輸入再開を働きかけている。
BSE発生率の極めて低いとされる生後24ヶ月未満の牛肉のみを使用」とアピールしているが、日本国内で発見された確認例には「生後23ヶ月」と「同21ヶ月」というのがある。
牛角にしても、そのいい加減さはどっちもどっち。
全ての牛が食肉牛であり、ホルスタイン種(乳牛)は一切使用していない」なんて涼しい顔をしているけれど、「肉牛には感染しない」なんて資料があるなら見せてもらいたい。そもそも、前回の騒動の時の「アメリカ産とオーストラリア産だから安全」なんて啖呵はどこにいったんだ?
つまり、両社ともイメージ戦略としてのリリースは出しても、消費者に対してキッチリと説明する気なんてさらさらない、ということになる。
マクドナルドにしたって「ビーフパティはオーストラリア産」なんて対岸の火事みたいにしているけれど、オーストラリアだってBSE清浄国“だった”アメリカから種牛を購入していることは、どう説明するんだろう。

結局、あなたの会社で扱っている食材は安全なのか? 聞きたいのはそれだけだ。
プロパガンダとしては、「○○産だから安心」というイメージ戦略で消費者を思考停止にしてしまうのが一番ラクだろうし、効果もあがるんだろう。でも、それは結局最小の作業で最大の効果をあげようという、資本主義原理主義の狂信的姿勢でしかなく、「食」文化に関わるものの姿勢でもなんでもない。

でも、答えなんてなくてもいい。もう行かないから(いままでもほとんど行ったことないけど)。
たとえ食材が安全だったとしても、消費者に対して目先のゴマカシを平気でするような企業なんて、信用できるはずないんだから。

焼肉サラン
西武新宿線下井草駅南口を下り、目の前の商店街を新宿方向に左折。西友を少し越えたところ。