志しなき構造改革

 吉野家ディー・アンド・シーの安部修仁社長は、毎日新聞のインタビューに「世界標準では、生後30カ月までの牛の細胞にはBSEプリオンは形成されない」なんて答えているけれど、つまり日本で発見された感染例、23ヶ月と21ヶ月というのは何かの間違いとでも言いたいんだろうか。
 まあそうだったとして、自社リリース*1の「24ヶ月以内だから安全」という理屈をいきなり6ヶ月拡大したのはどんな根拠があるのやら。
『「全頭検査」は「安心」な言葉だが、それだけが安全を確保する手段ではない』など、自分たちが主張している「全頭検査に科学的根拠はない」という主張をくり返しているけれど、「米国では、その若い牛の危険部位を除去する技術も進んでいる」という説明には疑問も残る。日本のと殺が高圧電流を使った「安全」なものに対して、アメリカのそれは「銃で脳をぶち抜く」という、一番リスクの高い脳漿を飛び散らせてしまう物騒なものが中心だからだ。
 結局この会社、自社利益のためなら目先のゴマカシでイメージ戦略を振り回すことくらい平気なんだろう。
「全頭検査」が過剰反応だ、という主張が必ずしも的外れだとは思わない。でも、アメリカの牛肉が安全かどうか、という議論とはまた別の話のはず。
 本質的な安全論議がスポイルされてしまうという点では、そうした口先のゴマカシも、全頭検査への執着も、同じ穴のムジナだろう。

 もっとも、「安さ」だけをもとめて農作物の自給率をガンガン下げてきた原動力は市場にこそあったわけで、そう考えると、リスク分散(というか回避)をしてこなかったのは消費者ひとりひとりだ、っていう問題が根っこにある、ってことは忘れてはいけない。
 安全なのは国産だけ、なんて言っちゃえば、それも「過ぎたるは……」だけれど、安全なものを食べたい、という意識がここまで希薄にならなければ、農作物の海外依存がここまで進むことはなかったと思う。

 岩手土産のニンニク*2ゴマ油でサッと炒めただけで甘くてホクホクになるけど、支那産のニンニクは串焼きでしっかり火を通しても苦いままでガリガリしている。そんな単純なことのはずなんだけど……。