スリスリ

 我が家の近所は比較的庭や農地のあるのんびりしたところのせいか、地域ネコ(要はノラ猫)が結構いて、ネコマップができるくらいの数が住んでいる。

 日中道を歩いていたら、どこからともなく「ニャ〜」と声がする。
 左右を見回しても猫の姿は……と思ったら、背丈くらいのブロック塀の上で、お母さんネコの「中」が丸くなって座っていた。
「ニャア」と返事をしたら、「ニャ〜」と返事が帰ってくる。
 それだけでなんだか楽しい気分になるから不思議だ。「ネコはサービス業」誰かがどこかで言っていたのを思い出す。

 唯一コミュニケーションのとれているのが、その「中」のファミリー。
 中はトラ猫(ときどき見かける彼女の兄?がそっくりな模様で「大」)。去年生まれた子猫が3匹。黒っぽいトラの「ダーク」、白いおなかでカギしっぽの「フック」、そして白い毛の面積が広くて、引っ込み思案なのが「オクビョウ」。
 呼んだら返事をしてくれたり、なでさせてくれるのようになったのは中だけ。兄二匹に末娘のオクビョウちゃん、といった感じに見える三兄弟。子猫はまだまだ警戒心が強い。
 大きくなっていくにつれて、一番元気だったダークはどんどん寡黙で孤独なネコになっていったし、人なつっこかったフックはだんだん気難しくなってきた。そして、一番人を怖がっていて、いつもフックのしっぽを猫じゃらしにしてもらって遊んでいたオクビョウが、今は一番積極的で、物おじしない。

 冬になって、彼等を見かけることがすっかり少なくなった。どこか暖かいねぐらがあるんだろうか。いつも見かけるあたりで「ニャ〜〜〜」と呼んでみても、返事がないことが数カ月続いた。

 今日も「ニャ〜」と呼びかけながら歩いてみた。
 すると、どこかから「ニャン」と返事が聞こえる。でも、中の声ではないみたいだけど……と思ったら、アパートの物かげから出てきたのはオクビョウだった。
「ニャア?」
「ニャン」
 道路まで出てきたオクビョウは、足もとまでやってくると、体が触れるか触れないかくらいの微妙な「スリスリ」をしてくれた。これが「クロ號」に出てきたネコのコミュニケーションツールのスリスリなんだ! とちょっと感動。
 でも、触ろうとするとスッと逃げる……で、また近付いてくると、スリスリ。
 もしかして、さっきまで料理してたマグロのにおい残ってた? なんて問いかけながら、名残おしいけどお別れ。ニコニコしながら家に帰る。
 
 その夜は、マグロのカマをジュウジュウ焼き上げながら、オクビョウたちのことを思った。

 我が家のあるブロックには「ランボー者」。三毛猫で体も大きくて、ゴミの袋を玄関先にでも出しておこうものなら、コイツに速効でガサガサやられてしまう。
 隣のブロックには「美人ちゃん」。ペルシャとロシアンブルーのミックス? といった感じの美しいメス猫。物腰もおとなしいし、鳴き声一つ聞いたことがない。
 その反対側のブロックにいる白黒ブチで、夏の暑い夜には道路でおなかを出してころがってるので「大の字」。
 そして、多分大の字の兄弟の「白タビ(前足が白タビをはいているように白い)」。毛並みからするとどうも三兄弟の父親らしいけど、まるで人なれしていなくて、今やオクビョウよりも小心者。

 オクビョウも魅惑された? マグロのカマは「まぐろのエン時」で購入(バナーからリンクしてます)。

 カマならキロ1,000円とか、500g400円みたいなとんでもない値段で買えるのだけど、いつも売っているわけではないのが残念。高級なトロとかがメインのお店だけど……まるで縁がないなあ。