「下妻物語」★2/5

オープニングからバシバシ始まるCM調の演出にグッタリ。中島哲也の演出は徹底的にテレビ的に軽薄。無意味に挿入されるアニメが妙にスピーディーでスタイリッシュなあたりと合わせて、どこか石井克人のパクリ調。画面コントラストのキツさも神経症的。

キャスティングでくせ者を山盛り集めて、期待させておいて肩すかしなのも、どこか石井克人的。特に樹木奇林の無駄遣いっぷりはまさに致命傷。
人間味の感じられないあざとい演出と映像に、アクの強い出演者がロールプレイのようにからんで期待される役割を淡々とこなしていく。

そして、これでもかと挿入されるベタなタイアップ。
例えば、ヤマハから金をもらっておきながら「スポーツ心臓」だなんてブラックジョークにしてみたり(『ロボコップ』)、ピザハットを「世界で唯一のレストラン」なんて設定に落としこんでしまう(『デモリションマン』)ような遊びはまるで見あたらない。

ジャスコはあくまでもジャスコだし、たかの友梨シンデレラコンテストにしてもベタなだけ。スポンサーをスポンサー様に奉っているだけで、そこには何の遊びもない。そのへんに、CM屋の馬脚が出てしまっている。

本当に映画が好きな人ならば,金を引っ張るためなら何でもアリというなりふり構わずの姿勢を、安易に認めるべきではない。
映画制作者が本来テレビに対して持っているアドバンテージというのは、目先の数字(視聴率)や、スポンサーに唯々諾々と従わないプライドでは無いのか?
ジャスコネタに喝采してしまうのであれば、映画を映画として認めず、一過性のネタとして消費してしまうだけだ。

映画は政治プロパガンダデマゴーグになるべきではないように、私企業の単なる長編PVにはなるべきではない。

そしてまた、中島哲也の脚本が、妙に「良くできた」ホンであることが、これもまたあざとい。

たしかにとてもよくできた脚本だった。シークエンスの展開、キャラクターの対比や対立の構図。バラバラの線がだんだん収束してきて、そして……といった盛り上げかた。
この脚本は、とにかく雑誌「シナリオ」や「ドラマ」、あるいは、専門学校の「シナリオ講座」的に“正しい”脚本なのだ。

もちろん、正しいものは正しい。間違ってなんかいない。でも一方で、そういった“正しさ”に思い入れを持つのは難しい。
例えば、手元にある「ドラマ」では、『隠し砦の三悪人』のシナリオがいかにすばらしいか、シークエンスの設定が絶妙か、なんて話を書いてあるのだけれど、そんな正しさだけが★5とか★4なんて評価に結びつけられるべきじゃないだろう。

しかし、その正しい脚本にしても、主人公に二度訪れる重要なシークエンスの両方で、解決策を徹夜仕事に求めてしまうのような安易さを持っているし、『模倣犯』で「アケミ」役だった【小池栄子】を「アキミ」にしてしまうようでは、あまりにもうすっぺらい。
元々、中島監督その人がうすっぺらい人なんだろう。プレスシートの自分のプロフィール欄には「バスト90センチ」なんて書いてあった。

そして、プレミア試写で見たことで、かえって寂しい印象を持ってしまった部分もある。

プレミア、監督やフカキョンの舞台あいさつ……というのに、花輪がチラホラしか並んでいない。プレミアでこんなに寂しいのは初めて見た。笑っていいとものテレフォンショッキングの方がよっぽど賑やかだ。
そして、「花まるマーケット」に出ているTBSの男性局アナが進行役だったんだけど、カミまくりでロクにしゃべれない。そして、当然のように(?)フカキョンはまともに質問に答えず、素っ頓狂なことばかり言っている。

監督のあいさつでは、クランクアップから1年近く経っている、なんて話が出てくる。
編集にそれだけ時間がかかったというよりは、それこそ諸事情があったんだろう(たかの由梨の部分は全くの後付で、資金繰りにタイアップをとってきたんじゃないか? なんて見方をする人もいたし)。

どこかこう、やる気のなさみたいのが漂ってきてる“プレミア”で、これなら映画館で見た方がよっぽど好印象だったかな、なんてくらいだった。
大体、プレミアなのに【嶽本のばら】がいないだなんて!

あと、致命傷だったのは【深田恭子】と【土屋アンナ】が徹底的にそのまんまの役柄を演じてそうに見えたこと。
フカキョンみたいに背中や二の腕がたくましい女の子がロリータに走るのは普通のことだっていうのはさておき、土屋アンナが口を開くといかにもタバコ焼けみたいな声だったのにガッカリ。
最後の最後でロリータファッションに身を包んだ彼女に感じたギャップは、本当にギャップだったのか、と思った。

もしこの作品が、フカキョンがイチコ、土屋アンナが桃子で作られてたら、そのギャップの分だけ完成度が高まっていたかもしれない。
彼女たちの役柄は、あまりにもそのまんまで、期待される通りのロールプレイにしか見えなかった。

土屋アンナの「あのギャグ」に敬意を表して+★1、結果★2

試写会は夕方の時間帯だったので、会社帰りのゴスロリお姉さんたちが、顔だけゴスロリでいるところをたくさん目撃できたのは面白かったけど。