ガンダム the Movie DEEP FILE 3

昨日の第二回 (「ガンダム the Movie DEEP FILE 2 黒船来航、そして制作スタート」参照)に続いて今回は、各製作スタッフが決定していった状況を聞く。
お話は、バンダイ版権事業部ヴィジュアルグループリーダー・安藤浩一さん。

  • 元々の原作からも、THE ORIGINからも大きく離れたワダ・エミさんの衣装デザインには、賛否両論ありました

ファーストガンダムの連邦正規兵はグレー、練習生はブルーとピンク。でも(ジャブローで)任官してもそのまま。フラウなんて改造制服のまんまですからね(笑)
もちろんそれは、当時のセルアニメではしかたがなかったセルの「バンク(使い回し)」の問題で、THE ORIGINでは「青は宇宙軍の……」みたいな設定替えをしている。
ジオンの制服でも、モールがちっちゃな短冊みたいに省略描写されてる。それをそのまま形にしたのを幕張あたりで見たら、相当におかしいわけですよ。
それで、ワダさんにお願いするという時点で、最初からああいったラインを期待してました。「乱」で「HERO」にしてくださいね、と(笑)。

ワダさんには、ジオンの尉官や佐官が四六時中礼服みたいに派手でマントつけた軍服を着ているのはおかしい、って指摘されました。
冒頭のホワイトベースのシーンで、ブライトやパオロ艦長が略服を着ているのはスルーしてもらえたけど、シャアの登場シーンでそれこそみなさんアレッとなっちゃった。
でも、その分エッシェンバッハ邸のパーティーや、ガルマの国葬のシーンでは盛大にやったわけですよ。

やっぱりオープニングはスペースコロニーにあのBGM、そして永井(一郎)さんのナレーションでしょう(笑)。
ただ、フルシンフォニーにアレンジし直すことや、全く新しい曲を、ということもあって坂本(竜一)さんにお願いしました。それから、ピアノ曲を使おうという話が出てきたことで、YMOつながりというか、出渕(裕・メカデザイナー)さんつながりというかで橋本(一子)さんにもお願いすることになりました。

  • さて、監督・脚本なんですが、これはなかなかスムーズには決まらなかったと聞いています

たしかに色々あったんですけれど、収まるところに収まった、ということでしょう。
特に、特技監督の樋口(真嗣)さんは、こちらからもお願いしたかったので、願ったりかなったりでした。
世界に本気でアピールしようと思ったときに、やっぱり日本は特撮だろう、と。
着ぐるみ使っていることを隠して、CGを売りにしてた恐竜映画もありましたけれど、こっちは逆にそれをウリにしようと。これが日本の特撮なんだ、っていうのを徹底的にやってもらった。
さすがにザクの着ぐるみはムリでしたけど(笑)。

サイド7の崩壊シーンのラッシュのとき、樋口さんが「これが“本当の”ニュー樋口です」っておっしゃったときはうれしかったですね(金子修介著「ガメラ監督日記小学館)」参照)。
まあ、平成ガメラ組っていうことで大映さんとはいろいろあったにしても、結局こうやって今回(「JABURO」)も金子さんにお願いできたのでよかったかな、と。

たしかに僕はアニメの脚本の仕事をしていたこともある(略)。でも、正直言って、「ロボットアニメ」を映像やストーリー(仕事)として考えたことはなかったし、怪獣に対しての思いのような物を、ロボット(モビルスーツという呼び方自体、当時はピンとこなかった)に持つことは難しいとしか思えなかった。だって、ロボットだぜ……(略)。
伊藤(和典/編注・本作脚本家)さんはロボット(レイバーって言わないといけないんだよね)を扱ったこともあるので相談にのってもらったし、彼と親交のあった出渕(裕/編注・本作メカデザイン)さんと会ったりしているうちに、これはチャンスかな、とも思うようになってきた。
要は、自分としてはどうしても違和感のある「ロボット」の映画だと思わなければいいんじゃないか。そもそもこのストーリー自体、どう考えても戦争映画の「新兵モノ」の文法で作られている(略)。
ガメラを引き受けた頃、妻と一緒に怪獣映画のビデオを見漁ったように、家でDVDを見ながら思った。伊藤さんと一緒ならできるんじゃないか(略)。
ガメラのときは「平成ガメラを終わらせてもいいなら3をやります」と言ったことで、結果的にガメラ4からは放り出されてしまったコンビが、知らん顔をしてビッグプロジェクトに参加できるなんてちょっと小気味いい。どこかで聞いたコピーじゃないけど、“こんどは戦争だ”。
金子修介著「ガンダム監督日記(小学館)」から

次回は、撮影中のエピソードなどをお届けします。乞うご期待!