「ラストダンス」★2/5

シャロン・ストーンも新境地開拓に必死だったのかもしれないけれど、彼女の存在はこの題材とこの作品そのものにはマイナス作用しかしなかった。脚本と演出が中途半端なので、セクシー女優が居心地悪そうにしているようにしか見えなかったのは彼女にとっても不幸。

題材はたしかに興味深いし、取り上げる価値も大きいものだとは思う。主演女優と脚本家と監督をすげ替えたらもっと他の展開もあったんだろう(もちろんそれは別の映画になっちゃうだろうけど)

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※以下はネタバレ


・死刑制度反対か、少なくとも疑問を提示する。

・法廷劇として、再審請求のドラマを見せる。

・立場を越えて怒濤の恋愛に落ちてしまうラブストーリー。

どの方向からのアプローチも中途半端で、観客のカタルシスは寸足らずの放置プレイのままエンドロールが始まってしまう。

・死刑制度反対なら、冤罪であるとか、せめて違法捜査、司法ミスといった構造的な救済が必要。情状酌量だけではカタルシス以前の問題として善意の観客はスッキリ納得できない。あれだけの残虐な殺人が「事実」だというのなら、そうそうリック(ロブ・モロウ)のシンパシーと恋愛に肩入れなんてできない。

・捜査や裁判の進行の落ち度を言うのであれば、決定的なポイント(とされる)クラック使用についてのエピソードを、ストーリー展開的などんでん返し(隠し球)として用意しておけばいいものを、二度も三度もズルズルと登場させてしまうのだから、緊張感もなければ展開と結果の底は浅く、意外性も驚きも何もない。

・そして、最大の落ち度はこれ。いつのまに信用するようになったの? いつのまに好きになったの? 納得できる描写はないのに、シンディ(シャロン・ストーン)はいつのまにか接見室に来る前には水で髪をなでつけてくるようになるんだから、ご都合主義にしか見えない。

で……「ラストダンス」ってなんだ?