「パトリオット」★2/5

パトリオットっていうのは「愛国者」、ナショナリストは「国家主義者」なんて辞書にはある。
でも、"patriot"っていうニュアンスは、国土とか国民に対してのものであって国家に対しての感情じゃない。もっというと、自分の暮らす土地や家族みたいな原初的な部分に根ざしているニュアンスがあると思う。
たしかにベンジャミン(メル・ギブソン)は、自分たちの生活する土地が戦場になること、土地の人や自分の家族が危険にさらされることを嫌って、戦争を避けようとする。これはたしかにパトリオット的なんだろう。
結局、次男のエピソードで、結局ベンジャミンはパパからMr.“トマホーク*1”に戻っちゃうわけだけど、三男坊四男坊の健気さと相まって、まだまだ彼はパトリオット
民兵の指揮官になっても、チェスのコマの“祈り”の弾丸をせっせと作っても、ゴーストと呼ばれるベンジャミンはまだまだ良きパパだったと思う。

ところが、長男坊(ヒース・レジャー)が民兵募集に行った教会で、後に彼の妻になる女の子が演説をしたあたりから、映画のトーンがどんどん“ナショナリスト”に急旋回してしまうような印象を受けてしまってからは、なんだか気持ちがさめてしまった。

「国生み」を経験したことがなく、これからも永遠に経験することのないアメリカという国は、自らの国と社会のアイデンティティーを、星条旗というイコンや「アメリカの正義」に求め続け、こうして具体的な形にし続ける作業を止めることはできないんだろう。
……となると、あれだけの残酷描写をやって、R指定アメリカ)にしちゃう必然性がよくわかんないんだけど。

独立戦争の歴史的経緯を描写しているわけではないので、そのへんの知識がないとピンとこない映画だし、バイオレンスも過剰なので、誰もが楽しめる映画ではないと思います。
大半の日本人にとってはもっとピンとこないフレンチ・インディアン戦争を題材にしていても、それでも見どころのたくさんあった「ラスト・オブ・モヒカン」にくらべると数段落ちるかな、といったところかも。

クライマックスに向けてのシークエンスでは、星条旗が出てくる度に「イ〜ンディペンデンス、デ〜〜〜イ!」と笑いながら見ていた。
一緒に見てた人が感動したがりの人じゃなくてよかったです、ホントに。

*1:これもミサイルの名前だなあ……